2030年冬季五輪・パラリンピック招致に向け札幌市が29日に公表した大会概要案には、既存施設の活用などのさまざまな経費削減策が盛り込まれた。市は今後、市民との対話や道民への意向調査を行うが、計画通り招致へ進めるかどうかは住民の理解と機運醸成にかかっている。
札幌では日本経済が右肩上がりだった1972年に冬季五輪が開催され、メダルラッシュが起き、インフラ整備も進んだ。今回は2030年度末に北海道新幹線の札幌延伸が計画され、五輪と合わせたまちづくりや観光客増を狙う。ただ、人口減で市財政も厳しいなか、市民に理解が得られるのか。新型コロナウイルスの感染拡大下で、ほぼ無観客で行われた東京五輪の経費がふくらみ、五輪のあり方への疑問もあるなか、五輪招致の機運がどこまで高まるかは未知数だ。
市が示した大会概要案では、2千億~2200億円と試算した大会運営費は国際オリンピック委員会(IOC)の負担金やスポンサー収入などでまかない、原則税金を投入しないとする。市負担となる施設整備費は既存施設の改修や建て替えを前提とし、従来案の800億~1400億円から最低限の800億円に抑える。市の実質負担額は400億~600億から450億円と試算した。
主な施設整備費は、アイスホッケー会場となる月寒体育館(豊平区)の建て替えで365億円(うち市負担は214億円)。現施設を札幌ドーム周辺に移転し、新たな施設をつくる。大会時は新旧両施設の活用を検討し、大会後は旧施設を取り壊すという。秋元克広市長は会見で「老朽化しており、大会のあるなしにかかわらず建て替えが必要。新設にはあたらない」と説明した。
スキーのジャンプ競技では、ラージヒルの大倉山ジャンプ競技場(中央区)にノーマルヒルを併設することで会場を一本化(整備費は市負担で78億円)する。選手村は、更新時期を迎える月寒地区の市営住宅を集約して建て替える計画と連動させ、一部を大会時の選手村として活用する(同157億円、うち市負担86億円)ほか、民間ホテルへの分散も進めるとしている。
概要案には会場配置の変更点も盛り込まれた。従来はニセコのみで行う計画だったアルペンスキーは、気象条件や競技日程の関係で札幌市のサッポロテイネスキー場も活用することなども検討している。
今後は新たな概要案が市民の理解を得られるかが鍵になる。市は、来年1月中旬~2月中旬にシンポジウムやワークショップなどを開いて市民対話を実施、3月までに市民だけでなく道民を対象にした意向調査を行う。意向調査の結果は「今後の進め方の参考」とし、招致を進めるかどうかは「総合的に判断する」(秋元市長)という。
市は動画やSNSなども活用し、子どもや若者も含めた幅広い世代への説明機会を設けたいとしている。秋元市長は「オリンピック・パラリンピックは、将来の札幌が市民に愛され、暮らしやすく、多くの人を魅了し、輝き続けるための持続可能なまちづくりを進めるプロジェクト。一人でも多くの方にこのプロジェクトに共感いただけるよう尽力していきたい」と語った。(中野龍三、佐藤亜季、能田英二)
秋元・札幌市長会見の一問一答
秋元市長の記者会見での主な一問一答は以下の通り。
――経費削減の方法は。
「既存施設を最大限活用し…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル